後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 体の中から温かくなったので電気ストーブを300Wに落として、タイマーを1時間にセットした。
 それから洗面所で化粧を落としてスキンケアと歯磨きをしたあと、コンポにCDをセットして部屋の明かりを落とした。
 豆電球がわたしを見つめていた。
 何か言いたそうだったので、「ありがとう。でも大丈夫。おやすみなさい」と声をかけてリモコンの8番ボタンを押した。
 
 コーヒーショップで頭に浮かんだメロディが部屋に流れてきた。
『JUST THE WAY YOU ARE(素顔のままで)』
 心の中にビリー・ジョエルの温かい歌声がしみ込んでくると、ビリーの声に重なるようにサックスの音色が聞こえてきた。
 グラミー賞を4度も獲得したフィル・ウッズの優しい音色だ。
 聴き惚れていると、今度はサックスの音に重なるようにビリーの歌声が戻ってきた。
 その優しい声に包まれながら、いつの間にか夢の中へ入っていった。

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