『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
男、そして、女
♪ 男 ♪
気が気ではなかった。
岩手県に出張させていた社員に指示を出してから10日が経っていた。
彼に出したオファーは短期間で結果が出るものではないので、せっつくような電話は控えていたが、それでも返事が待ち切れなかった。
4月2日、たまらなくなって電話をかけた。
「どうなった?」
すると、「時間がかかって申し訳ありません。社長が希望される条件に当てはまるところが中々なくて……、それに私も土地勘がないので……」と消え入りそうな声が返ってきた。
「ダメだったか……」
思わず沈んだ声が出たが、「いえ」と即座に否定された。
えっ?
その意味がわからず戸惑っていると、「遅くなりましたが、やっと条件に合うところが見つかりました」と尻上がりに声が明るくなった。
見つかった?
なんでそれを先に言わないんだよ、と口に出かかったが、「遅くなって、本当に申し訳ありませんでした」という神妙な声に反応して気の抜けたような声が出てしまった。
「そうか、見つかったか、そうか……」
気が気ではなかった。
岩手県に出張させていた社員に指示を出してから10日が経っていた。
彼に出したオファーは短期間で結果が出るものではないので、せっつくような電話は控えていたが、それでも返事が待ち切れなかった。
4月2日、たまらなくなって電話をかけた。
「どうなった?」
すると、「時間がかかって申し訳ありません。社長が希望される条件に当てはまるところが中々なくて……、それに私も土地勘がないので……」と消え入りそうな声が返ってきた。
「ダメだったか……」
思わず沈んだ声が出たが、「いえ」と即座に否定された。
えっ?
その意味がわからず戸惑っていると、「遅くなりましたが、やっと条件に合うところが見つかりました」と尻上がりに声が明るくなった。
見つかった?
なんでそれを先に言わないんだよ、と口に出かかったが、「遅くなって、本当に申し訳ありませんでした」という神妙な声に反応して気の抜けたような声が出てしまった。
「そうか、見つかったか、そうか……」