『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
ネット時代に必要なのは常識や経験ではなく〈新たな発想〉と〈豊かな感性〉だと考えていた男は、情報工学の知識と技術に加えて、常識に縛られない柔軟な発想を持ち、かつ、音楽や美術などの芸術に関心が高い学生や社会人に的を絞ってアプローチを行った。
その結果採用したのが五人なのだ。
彼らは個性の塊だった。変人的要素も多分にあった。でも、それが良かった。〈右へ倣え〉の人物は必要ないのだ。記憶力だけを武器にした有名大学出身者や、セミナーで必死になってメモを取る他人依存型の秀才など必要ないのだ。伸び伸びと自由に発想し、好奇心や感性の赴くままに突き詰めていく創造型人材こそが必要なのだ。
そんなことを思い出していると、彼らが次々に入社して初めて集合教育をした時に発破をかけたことが蘇ってきた。
「普通の人間になるなよ。指示を待つ人間になるなよ。安易な方向を選択する人間になるなよ」
そして、こう激励した。
「感性を研ぎ澄ませろ! 奇異な発想をぶつけろ! 会社や上司におもねるな! 反対意見に挫けるな! 信念を持って行動しろ! 先頭に立って突き進め!」
更に、この言葉で止めを刺した。
「変人に磨きをかけろ!」
彼らは全員ポカンとしていたが、誰かが笑い出すと、それが次々と連鎖していった。
その姿を見て男も一緒に笑った。その笑いがシンクロした瞬間、雇用関係を超えた太い糸で結ばれたように感じた。
今まで、現地での取材はトップが率先してやらねばならないと自らに言い聞かせて飛び回っていたが、これを機会に彼ら若手に任せてみようと思い立った。
心の底から〈社員への権限移譲〉という思いが湧き出てきたのだ。
自分は裏方に徹して社員を支援していけばいい。大きな方向性を示したあとは、彼らの発想と感性に任せるのだ。間違った道へ逸れそうになった時にだけアラームを出してやればいい。
会社設立以来、三段跳びの〈ホップ〉は自分が主導した。しかし、新型コロナによってパラダイム転換した新しい時代に始まる〈ステップ〉は若手社員に主導させる。そして、〈ジャンプ〉。それはどんな大跳躍になるのだろうか? 想像を遥かに超えた凄い着地になることは間違いないだろう。
世界新記録!
驚嘆と歓喜のアナウンスに祝杯を挙げている自分たちの姿が見えたような気がした。
その結果採用したのが五人なのだ。
彼らは個性の塊だった。変人的要素も多分にあった。でも、それが良かった。〈右へ倣え〉の人物は必要ないのだ。記憶力だけを武器にした有名大学出身者や、セミナーで必死になってメモを取る他人依存型の秀才など必要ないのだ。伸び伸びと自由に発想し、好奇心や感性の赴くままに突き詰めていく創造型人材こそが必要なのだ。
そんなことを思い出していると、彼らが次々に入社して初めて集合教育をした時に発破をかけたことが蘇ってきた。
「普通の人間になるなよ。指示を待つ人間になるなよ。安易な方向を選択する人間になるなよ」
そして、こう激励した。
「感性を研ぎ澄ませろ! 奇異な発想をぶつけろ! 会社や上司におもねるな! 反対意見に挫けるな! 信念を持って行動しろ! 先頭に立って突き進め!」
更に、この言葉で止めを刺した。
「変人に磨きをかけろ!」
彼らは全員ポカンとしていたが、誰かが笑い出すと、それが次々と連鎖していった。
その姿を見て男も一緒に笑った。その笑いがシンクロした瞬間、雇用関係を超えた太い糸で結ばれたように感じた。
今まで、現地での取材はトップが率先してやらねばならないと自らに言い聞かせて飛び回っていたが、これを機会に彼ら若手に任せてみようと思い立った。
心の底から〈社員への権限移譲〉という思いが湧き出てきたのだ。
自分は裏方に徹して社員を支援していけばいい。大きな方向性を示したあとは、彼らの発想と感性に任せるのだ。間違った道へ逸れそうになった時にだけアラームを出してやればいい。
会社設立以来、三段跳びの〈ホップ〉は自分が主導した。しかし、新型コロナによってパラダイム転換した新しい時代に始まる〈ステップ〉は若手社員に主導させる。そして、〈ジャンプ〉。それはどんな大跳躍になるのだろうか? 想像を遥かに超えた凄い着地になることは間違いないだろう。
世界新記録!
驚嘆と歓喜のアナウンスに祝杯を挙げている自分たちの姿が見えたような気がした。