後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 原稿とベータ版の最終チェックが終わったのは3日後だった。
 それをハウスのオーナーに確認してもらった。
 何か所か修正依頼があったので、それに対応したあと、ホームページをオープンさせた。
 そして、最上位得意客150人に、ホームページのアドレスを添付したメールを配信した。
 
『緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出自粛を要請されておりますが、いかがお過ごしでしょうか。旅行はもちろんのこと、外食やコンサート、趣味の集まりなどに3加できなくなり、不自由な暮らしを強いられていることと拝察いたします。

 さて、弊社も新型コロナウイルスの影響を受け、すべての予約がキャンセルになり、新たな企画を立ち上げることもできず、売上ゼロの状態が続いております。しかし、なんとか知恵を絞ってこの困難を乗り越え、新型コロナウイルス収束後の新しい時代に生き残るための施策に着手しているところであります。

 先ず、社員の雇用を守ることを最優先といたしました。一人も解雇することなくこの困難を乗り越えるためには何をすべきか、必死になって考えました。その結果、ご縁を頂いた岩手県のハウス野菜栽培会社に社員を派遣する契約を結ぶことができました。仕事が無くなった弊社と外国人材の入国禁止で人手が足りなくなったハウス野菜栽培会社の双方のニーズが合致したのです。そのことによって、社員は弊社に籍を置いたまま新たな職場に仕事を得ることができました。

 このハウス野菜栽培会社について簡単にご紹介いたします。高級スーパーと高級ホテルに限定販売している会社で、トマトと青物野菜をメインとしております。有機肥料と無農薬と清潔な環境管理による栽培によって、〈おいしさ〉と〈安心・安全〉をお届けするのをモットーとしており、各方面から高い評価を頂いております。緊急避難的とはいえ、このような素晴らしい会社で働かせていただく機会を持てたのは、弊社の社員にとっても幸せなことだと思っております。そこで、滅多にないこのような機会を皆様とも共有させていただければと思い、メールを差し上げました。社員が働く様子や野菜が育つ様子、共同生活をしている古民家での暮らしなどを日記風に発信させていただければと考えております。そしてそれが皆様の自粛生活に潤いをお届けすることに繋がるのであれば、この上ない喜びであります。弊社と皆様の懸け橋となるメルマガにご理解を賜れば幸いです。

 末筆ではございますが、皆様の益々のご健勝を祈念しております。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。                     社長』

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