『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
「ちょっと手が離せないから出てくれる?」
家事が一段落してちょっとひと休みという時、庭仕事をしている奥さんから声がかかった。
女は「はい」と答えて、廊下のニッチに置いてあるシャチハタの印鑑を持って玄関を開けた。
門扉の手前に若い男性配達員が立っていた。
重そうな大きな箱を持って、少し膝を曲げるような恰好をしていた。
受け取ろうとすると、重いから玄関の中まで運ぶと言う。
奥さんの姿が見えたので視線を向けると、OKの視線が返ってきた。
玄関の上り口まで運んでもらった。
「結構大きいわね」
箱を見た奥さんが思案顔になった。
それでも、箱の端を両手で持ち上げようとしたが、すぐさま顔をしかめた。
とても持ち上がりそうになかった。
女が反対側を持ち上げる格好をしたが、やめておきましょう、というように首を横に振った。
頷いた女は上面のガムテープを剥がして箱を開けた。
中には野菜がいっぱい詰まっていた。
『朝採れ野菜定期便』というチラシが目に入った。
裏を見ると、農作業をしている人たちの笑顔が並ぶ写真の上に、『元気だ! 岩手だ! 野菜がうまい!』という筆で書いたような太いキャッチコピーが浮き出すように印刷されていた。
家事が一段落してちょっとひと休みという時、庭仕事をしている奥さんから声がかかった。
女は「はい」と答えて、廊下のニッチに置いてあるシャチハタの印鑑を持って玄関を開けた。
門扉の手前に若い男性配達員が立っていた。
重そうな大きな箱を持って、少し膝を曲げるような恰好をしていた。
受け取ろうとすると、重いから玄関の中まで運ぶと言う。
奥さんの姿が見えたので視線を向けると、OKの視線が返ってきた。
玄関の上り口まで運んでもらった。
「結構大きいわね」
箱を見た奥さんが思案顔になった。
それでも、箱の端を両手で持ち上げようとしたが、すぐさま顔をしかめた。
とても持ち上がりそうになかった。
女が反対側を持ち上げる格好をしたが、やめておきましょう、というように首を横に振った。
頷いた女は上面のガムテープを剥がして箱を開けた。
中には野菜がいっぱい詰まっていた。
『朝採れ野菜定期便』というチラシが目に入った。
裏を見ると、農作業をしている人たちの笑顔が並ぶ写真の上に、『元気だ! 岩手だ! 野菜がうまい!』という筆で書いたような太いキャッチコピーが浮き出すように印刷されていた。