後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 男はその礼状を社員に回覧した。
 誰もが胸を打たれたようだった。
 そして、自分たちの仕事が顧客の人生に大きく関わっていることを実感したようだった。
 すると、企画立案やクレーム対応などに変化が表れた。
 顧客の立場に立って考え行動するようになったのだ。
 それは、顧客の傍に寄り添うという意味を真に理解したことの表れであり、男が口を酸っぱくして言い続けてもきちんと理解されなかったことがたった1通の礼状で腹に落ちたことを意味していた。
 それ以来、礼状や御礼メールはすべて社員と共有することにしている。
 常に顧客の傍で仕事をするために。

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