後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 宅配で届いた4種類のピザを小皿に分けて食べながら、Web会議ツールを使って岩手のメンバーと交流した。
 彼らは鍋をつついていた。
「岩手は感染ゼロですし、僕らは全員平熱で、咳・クシャミなしなので、安心して鍋をつつけます」と自慢げにリーダー格の社員が胸を張った。
「確かに。岩手は感染者がいないうえに、緊急事態宣言が解けたからいいよね」
 5月14日に8都道府県を除く39の県に対して正式に解除の通達が出ていた。
「東京は大変そうですね」
 東京の感染者数も激減していたが、まだ手を緩めるレベルには達していなかった。
 都知事からもしきりに3密回避を訴える声明が出ていた。
 そして、〈新規陽性者数〉〈新規陽性者における接触等不明率〉〈週単位の陽性者増加比〉の重要3指標をモニタリングしながら緩和や再要請の判断をしていくとの方向性が示されていた。
「東京は最後になるだろうね」
 残る8都道府県については、5月21日を目処に専門家の意見を聞いて判断されることになっていた。
 しかし、東京を含む首都圏の解除は最後になるだろうとの噂がもっぱらだった。

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