後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
初デートは、彼女が勤務する病院の近くのイタリアンレストランだった。
待ち合わせ10分前の6時20分にレストランに着いた。
予約席に案内されたが、彼女はまだ来ていなかった。
「何か飲まれますか?」と訊かれたが、水だけを飲んで彼女を待った。
しかし、約束の時間になっても現れなかった。
10分過ぎても20分過ぎても来る気配さえなかった。
男は2杯目の水を飲み干していた。
その間、スマホを何度も確認したが、着信履歴はなかった。
すっぽかされたという嫌な予感が脳裏を過り、待ち惚けという言葉が追随した。
その瞬間、彼女の顔が浮かんだ。
あの日照れて上がってしまった彼女の顔だった。
男は嫌な予感を急いで打ち消した。
そんなはずはない、
そんなことをする女性ではない、
バカなことを考えるな、
一瞬でも不信の念を持った自分を叱った。
急な仕事が入ったに違いない、病院に急患はつきものなのだ。
そう言い聞かせて、3杯目の水を一口飲んでから入口に目をやった。
すると、ドアが開いて若い女性が手を振った。
しかし、男に向けてではなかった。
男の後方席に座る男性に向けてのものだった。
男の横を通り過ぎたその女性は、きつい香水の臭いを残して席に座った。
待ち合わせ10分前の6時20分にレストランに着いた。
予約席に案内されたが、彼女はまだ来ていなかった。
「何か飲まれますか?」と訊かれたが、水だけを飲んで彼女を待った。
しかし、約束の時間になっても現れなかった。
10分過ぎても20分過ぎても来る気配さえなかった。
男は2杯目の水を飲み干していた。
その間、スマホを何度も確認したが、着信履歴はなかった。
すっぽかされたという嫌な予感が脳裏を過り、待ち惚けという言葉が追随した。
その瞬間、彼女の顔が浮かんだ。
あの日照れて上がってしまった彼女の顔だった。
男は嫌な予感を急いで打ち消した。
そんなはずはない、
そんなことをする女性ではない、
バカなことを考えるな、
一瞬でも不信の念を持った自分を叱った。
急な仕事が入ったに違いない、病院に急患はつきものなのだ。
そう言い聞かせて、3杯目の水を一口飲んでから入口に目をやった。
すると、ドアが開いて若い女性が手を振った。
しかし、男に向けてではなかった。
男の後方席に座る男性に向けてのものだった。
男の横を通り過ぎたその女性は、きつい香水の臭いを残して席に座った。