後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 30分が過ぎても彼女は現れなかった。
 連絡もなかった。
 急に不安になった。
 まさか事故? 
 病院からこの店までは歩いて10分くらいと言っていたが、その間に事故に巻き込まれたのかもしれないと思うと、居ても立ってもいられなくなった。
 店の人に病院の場所と道順を訊いて飛び出すように外に出て、早鐘のように打つ心臓を右手で押さえながら病院への道を急いだ。
 しかし、事故の様子はどこにもなかった。
 
 病院に着いたが、外来の入口は閉まっており、夜間の入口を示す札がドアに掛けられていた。
 すぐにそこへ向かった。
 しかし、中へ入ることはできなかった。
 夜間受付を通れるのは急患か見舞いに限られていたのだ。
 中に入って薬局を覗きたかったし、彼女を確認したかったが、それは叶わなかった。
 ここで待とうかとも思ったが、万が一すれ違いになるといけないと思って店に戻ることにした。

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