後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 彼女の両親へ挨拶に行く日程について話し合うことにしていた日、彼女から「今日は行けない」という電話があった。
 最近体がなんとなくだるく、疲れやすかったが、今朝は起きるのが辛かったのだという。
 仕事が忙しかったから疲れが溜まっているのだろうとも言っていた。
 でも、1日休めば大丈夫だから、と男を安心させた。
 くれぐれも無理しないように、と伝えて電話を切った。
 彼女のために用意した食材をどうしようかと考えたが、2人分を食べれば彼女が元気になりそうな気がして、2人分作って食べきった。
 その夜は、2人で買った大きな枕を抱きながら彼女の体調回復を願い続けた。
 
 しかし、翌日も彼女は仕事を休んだ。
 息切れや動悸がするという。
 声の様子が変なので、診察を受けることを勧めたが、休めば治るから、と取り合ってくれなかった。
 しかし、その後も体調は良くならなかった。
 というより悪化しているように思えた。
 頭痛や関節痛がするし、鼻血や歯ぐきからの出血もあると言い出したのだ。
 
 心配になってネットで彼女の症状を調べた。
 すると色々な病気の可能性がありそうだったが、その中に気になる病気があったので、すぐに電話をかけた。
「薬剤師が病気になったらシャレにならないぞ」と冗談めかして言ったあと、強く検査を勧めた。
「心配性なんだから」と揶揄するような声が聞こえたが、何度も強く勧めると、渋々ではあったが診察を受けることに同意した。

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