後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 翌日、血液検査やCT検査などを受けたあと、骨髄検査が行われた。
 検査後すぐに結果と病名が告げられた。
 聞きたくない内容だった。
 急性骨髄性白血病。
 血液の癌だった。
 進行が速い病気だと言われた。
 その上、全身の臓器へ広がっているという。
 本人には伏せられていたが、両親に対しては、かなり厳しい状態です、と告げられた。
 それを聞いた男は目の前が真っ暗になった。
 体中から力が抜けて、何も考えられなくなった。
 
 すぐに入院して抗がん剤治療が始まった。
 複数の抗がん剤が併用され、更に骨髄に直接抗がん剤を投与する髄腔内注射が行われると、医師から事前に告知された通りの副作用が現れた。
 食欲が無くなった上に、吐き気を催したのだ。
 その上、口内炎が多発した。
 そして、12日目、遂に髪の毛が抜け始めた。
 それだけではなく、眉毛まで抜け始めた。
 そして、体中の毛が抜けた。
 彼女は「赤ちゃんみたいになっちゃった」と言って男の手を下着に中に導いた。
 下腹部にあるはずのものがなかった。
 唖然としていると、その先に導かれた。
 しかし触れてはいけない気がして直前で手を止めた。

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