後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 病気の進行と戦う彼女を見ているのが辛かった。
 でも、彼女は必死になって戦っていた。
 その姿には鬼気迫るものがあり、「白血病なんかに絶対負けない!」とツルツルの頭を撫でながら男に何度も言った。
 結婚式と新婚旅行という目標が彼女を支えていたのだ。
 
 この病気の発症頻度は10万人に2~3人だという。
 0.002パーセント。
 そんな低い確率の病気に彼女が侵されるなんて信じられなかった。
 それも、プロポーズしたばかりなのだ。
 残酷な仕打ちに心が壊れそうになった。
 
 彼女はどんどんやせていった。
 食べ物を受け付けないし、もし食べられてもすぐに吐いてしまうから、栄養は点滴に頼るしかない状態だった。
 しかし腕に繋がれた点滴チューブが痛々しかった。
 それに同じ場所に針を刺し続けていると痛みが増したり赤くなったりするので、何回も点滴部位を変更しなければならなかった。
 白くすべすべしていた彼女の腕は見る影もなくなっていた。

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