後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 彼女のいない人生を生きることに意味があるのだろうか……、

 出会った時から24時間常に彼女のことを考えていた。
 心は常に彼女と一緒だった。
 彼女がいるから仕事を頑張れた。
 彼女がいるから引っ越しをした。
 彼女がいるから料理を覚えた。
 彼女がいるから毎日が楽しかった。
 彼女がいるから……、
 
 でも、もう彼女はいない。
 人生のすべてだった彼女はもういない。
 もうどこにもいないのだ。
 
 それは、彼女と出会う前に戻る事とは違っていた。
 部屋の中はもちろん、
 病院から駅までの間にあるレストラン、
 コーヒーショップ、
 鮨屋、
 ラーメン屋、
 居酒屋、
 牛丼屋、
 スーパー、
 コンビニ、
 ドラッグストア、
 100円ショップ、
 花屋、
 公園、
 池、
 橋、
 道路、
 路地、
 そのすべてに彼女との思い出が詰まっているのだ。
 彼女と出会う前はただの池だったところが、2人で足漕ぎボートに乗った瞬間から特別な場所に変わったのだ。

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