後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 1週間の有給休暇が終わろうとしていた。
 日付が変わったら仕事へ行かなければならないのはわかっていたが、気持ちの整理はまったくついていなかった。
 たった1週間でつくはずはなかった。
 いや、1か月後でも、1年後でもそれが変わるはずはなかった。
 
 この1週間、一日中骨壺を抱きながら彼女に話しかけていた。
 それ以外に何をする気も起らなかったので、ほとんど動かずじっとしていた。
 それでもお腹がすくので、仕方なくカップラーメンやパンを口にしたが、まったく味がしなかった。
 ほんの少し食べては残りを捨てた。
 台所のペダル式ダストボックスの中には生ごみを入れた袋が重なっていたが、収集日のことは頭から完全に消えていた。

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