後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 その夜、夢の中でも彼女とデートをした。
 船上パーティーでダンスを踊っていた。
 彼女の髪に口づけをしながら幸せに酔った。
 しかし突然、多数の暴漢が現れて2人に襲いかかった。
 男は彼女を守るために戦ったが、多勢に無勢で逃げるしかなくなった。
 2人でテベレ川に飛び込み、必死に泳いで向こう側の岸に辿り着いた。
 暴漢は追ってこなかった。
 安心した2人は抱き合って口づけをかわした。
 長い長い口づけをかわした。
 
 アパートに帰ってびしょ濡れの服を脱ぎ、熱いシャワーを掛け合った。
 そして、そのまま抱き合った。
 一つになると、男の首に回していた彼女の腕がきつく締まり、内からの波動が胸へ、唇へ、そして脳に伝わり、かつてないほどの高みに達した瞬間、狂おしいほどの歓喜を溢れさせた。

 すべての力を使い果たした時、目が覚めた。
 とっさに彼女を探した。
 しかし、どこにもいなかった。
 夢の中に戻りたかった。
 でも戻れなかった。
 彼女の写真を抱いて泣いた。

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