『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 男の長い話が終わった。
 誰も何も言わなかった。
 無言で立ち上がり、無言で片づけをし、無言で玄関から出て行った。
 
「ありがとう」
 三人の後姿が消えた扉に向かって男は呟いた。
 すると、ありがとう、という声が聞こえたような気がした。
 それは、とても懐かしく愛しい声のように思えた。


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