後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 明かりを点けても部屋は暗かった。
 最低限の照明しかないのだから仕方がない。
 この値段で多くのことを望むのは欲張り過ぎだ。
 男はコートのままベッドにゴロンと横になった。
 すると、何かが気になった。
 なんだろうと思って横を見ると、もう一つのベッドが寒そうに震えていた。
 男は体を起こして隣のベッド移り、横になった。
 しかし同じことだった。
 元のベッドが寒そうに震えていた。
 ツインも善し悪しだな……、
 男の独り言が低い天井に吸い込まれていった。

< 31 / 373 >

この作品をシェア

pagetop