後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 分析に基づいた提案書が届いたのは6月25日だった。
 読んでいて目頭が熱くなった。
 内容もさることながら、若手社員の行動力に感動したのだ。
 これは誰かに指示されたものではない。
 彼らが自主的に始めたものなのだ。
 社会経験がまだ数年しかない彼らの成長を感じて、胸がいっぱいになった。
 しかし、喜んでいるだけでは前に進まない。
 実行しようとすれば少なからず投資が発生するのだ。
 それは、ハウス野菜栽培会社のオーナーの負担が増すことを意味している。
 この厳しい状況の中で新規投資を考える経営者は皆無に等しいだろう。
 まずやるべきことは経費削減であり、手元資金の確保なのだ。
 例えどんなに素晴らしい計画であっても状況が好転しない限り踏み切ることはないだろう。
 男はオーナーへのプレゼンを許可したが、甘い期待は持たないようにと釘を刺すのを忘れなかった。

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