後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 何故この人たちは死ななければいけなかったのだろう? 
 何故遺族たちは最愛の人を失ってしまったのだろう? 
 病気だから仕方がない? 
 治療薬がないのだから仕方がない? 
 そんなことはない。
 死ぬ必要のない命が失われてしまったのだ。
 悲しみに満ち溢れた映像を見ながら、人災という言葉が脳裏に浮かんだ。
 
 国のリーダーとは? 
 その最大の責務とは? 
 今こそ真剣に考えなければいけない時に来ているのではないだろうか。
 国を率いるリーダーの最大の責務は国民の安全と健康を守ることだと言っても過言ではない。
 つまり、命を守ることだ。
 なんとしてでも守り抜くことだ。
 そして国民は自分たちの安全と健康を守ってくれるリーダーを選ばなければならない。
 景気のいい話やバラ色の未来を振りまくペテン師を選んではいけないのだ。
 もしそんなことをしたら大変なことになる。
 なってはいけない人がリーダーになった国、選んではいけない人を選んでしまった国民、それは、不幸という名の坂を転がり落ちる運命共同体となってしまうのだ。
 選ばれた時点で、選んだ時点で、悲惨な結果をもたらすシナリオが始まってしまうのだ。
 誰も止められない最悪のシナリオが。
 
 一票の責任の重さ、それは新型コロナ危機が放つ強烈な警告に違いない。
 安易な選択、無責任な棄権、それは自らに唾を吐く行為だということを肝に銘じなければならない。
 男は都知事選の投票用紙を見つめながら、一票の責任の重さをひしひしと感じていた。

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