後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 翌日の朝、敷地内に建つ〈離れ〉に足を入れた。
 本社と男の自宅になる建物だ。
 これは築50年で半古民家といった雰囲気だ。
 改装した15畳のリビングに8畳の和室が1室、6畳の和室が2室。
 あとは台所と浴室とトイレ。
 風呂と便所と言い換えた方がいいかもしれない。
 しかし、東京のマンションと違って味がある。思い切り気に入った。
 
 リビングを執務スペースにして、8畳を自分の部屋にした。
 6畳の2間は東京支社の社員が出張でやって来た時のゲストハウスにすることにした。
 といっても年に何回も来ないはずなので、普段は趣味の部屋として使うことにした。
 
 明日東京から荷物が届く。
 岩手での生活が始まると思うと、〈再生〉という言葉が脳裏に浮かんだ。
 そして、〈生まれ変わるのかもしれない〉という思いが頭を過った。
 新たな扉が開く予感がした。

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