後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
準備が完了したのは午後8時過ぎだった。
若い社員のお腹が鳴っていた。
今日は肌寒いから鍋にしようかと提案したら、全員の手がすぐに上がった。
囲炉裏のある台所で鍋を囲んだ。
野菜と鶏もも肉、豚肉、椎茸、コンニャクなどをたっぷり煮込んで、その中に〈ひっつみ〉を入れた。
鶏と豚による出汁がいい塩梅で、旨味が口の中いっぱいに広がった。
それになんといっても温まる。
更にぬる燗を合わせると、も~たまらない。
みんなの顔がみるみる赤くなってきた。
しかしそれはお酒のせいだけではないように思えた。
興奮というエキスが全身を巡っているに違いなかった。
朝採れ野菜定期便の受注数が右肩上がりに伸びているし、ICTを活用した生産性向上プロジェクトが始まっている、その上、古民家活用ビジネス支援も始まる、興奮するなという方が無理なのだ。
それに、社員以上に興奮しているのは自分かもしれなかった。
知らないうちに声が大きくなっていたから間違いないだろう。
大変な時期を乗り越えてきたのだから当然だ。
今夜は社員と一緒に弾けても罰は当たらない。
社員にぬる燗を注いでは乾杯を繰り返した。
片づけを終えて歯を磨き、布団に入ったのは11時を回っていた。
明日のことを考えると眠れそうもなかったが、睡眠不足で大事な初面談に臨むわけにはいかない。
ぐっと瞼を閉じて紫陽花の花の数を数え始めた。
1枚、2枚、3枚、4枚……、57枚まで数えた時、紫陽花の花びらに乗って遠い所へ運ばれていった。
若い社員のお腹が鳴っていた。
今日は肌寒いから鍋にしようかと提案したら、全員の手がすぐに上がった。
囲炉裏のある台所で鍋を囲んだ。
野菜と鶏もも肉、豚肉、椎茸、コンニャクなどをたっぷり煮込んで、その中に〈ひっつみ〉を入れた。
鶏と豚による出汁がいい塩梅で、旨味が口の中いっぱいに広がった。
それになんといっても温まる。
更にぬる燗を合わせると、も~たまらない。
みんなの顔がみるみる赤くなってきた。
しかしそれはお酒のせいだけではないように思えた。
興奮というエキスが全身を巡っているに違いなかった。
朝採れ野菜定期便の受注数が右肩上がりに伸びているし、ICTを活用した生産性向上プロジェクトが始まっている、その上、古民家活用ビジネス支援も始まる、興奮するなという方が無理なのだ。
それに、社員以上に興奮しているのは自分かもしれなかった。
知らないうちに声が大きくなっていたから間違いないだろう。
大変な時期を乗り越えてきたのだから当然だ。
今夜は社員と一緒に弾けても罰は当たらない。
社員にぬる燗を注いでは乾杯を繰り返した。
片づけを終えて歯を磨き、布団に入ったのは11時を回っていた。
明日のことを考えると眠れそうもなかったが、睡眠不足で大事な初面談に臨むわけにはいかない。
ぐっと瞼を閉じて紫陽花の花の数を数え始めた。
1枚、2枚、3枚、4枚……、57枚まで数えた時、紫陽花の花びらに乗って遠い所へ運ばれていった。