後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
2人で並んで座っていた。
砂の上だった。
潮騒が聞こえた。
そして、雨が降っていた。
パレルモの砂浜だった。
雨に濡れながら無言で海を見ていた。
男の右手小指と彼女の左手小指が微かに触れ合っていた。
彼女の薬指にペアリングはなかった。
厚い雲の向こう側にいる太陽が姿を現さないまま消えようとしていた。
海からの風が強くなり、雨が前から叩きつけてきた。
それでも痛みはなかった。
しかし、目を開けていられなくなった。
俯いて目を閉じていると、彼女の左手が男の右手を握った。
その瞬間、海風が一段と強くなり、あおられて体が揺れた。
そのまま後ろに重心がかかると、前からすくうように体の下に風が入り、ふわ~っと浮いた。
そのタイミングを逃さないというように彼女が男の手を強く握って上に掲げると、体の下に入り込んだ風が絨毯のように2人を乗せて持ち上げた。
そして一気に空高く昇って行った。
砂の上だった。
潮騒が聞こえた。
そして、雨が降っていた。
パレルモの砂浜だった。
雨に濡れながら無言で海を見ていた。
男の右手小指と彼女の左手小指が微かに触れ合っていた。
彼女の薬指にペアリングはなかった。
厚い雲の向こう側にいる太陽が姿を現さないまま消えようとしていた。
海からの風が強くなり、雨が前から叩きつけてきた。
それでも痛みはなかった。
しかし、目を開けていられなくなった。
俯いて目を閉じていると、彼女の左手が男の右手を握った。
その瞬間、海風が一段と強くなり、あおられて体が揺れた。
そのまま後ろに重心がかかると、前からすくうように体の下に風が入り、ふわ~っと浮いた。
そのタイミングを逃さないというように彼女が男の手を強く握って上に掲げると、体の下に入り込んだ風が絨毯のように2人を乗せて持ち上げた。
そして一気に空高く昇って行った。