『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 いつもは枕元で入眠のための音楽をかけるのだが、今夜はそんな気が起こらなかった。
 雨が入らないように僅かに窓を開けて、布団の中で耳を澄ませていた。
 助けを呼ぶ声が聞こえるかもしれないと、ひたすら耳を澄ませ続けた。
 しかし、聞こえてくるのはザ―っという雨の音だけだった。
 時間と共に激しくなっているように思えた。
 
 この雨の中でどうしているのだろうか、
 行方不明の二人の安否が気になって仕方がなかった。
 もしかしたらこの近くに、ほんの近くにいるかも知れないのだ。
 それなのに探すこともできない。
 自分の無力さに唇を噛んだ。


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