後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
YOUR DREAM~女~男~エピローグ
          ∞ YOUR DREAM ∞

 若手社員5人はハウスの中にいた。
〈ICT技術をフル活用したトマト栽培の生産性向上〉を具体的に進めるために、関連するメーカーの担当者との打ち合わせをしていた。
 分析機器や通信機器やそれと連動して換気や灌水を自動化するためのシステムなどについて協議していた。
 
 打ち合わせが終わって古民家に帰ったのは夜7時を過ぎていた。
 しかし、古民家も離れも明かりは付いていなかった。
 社長とリーダー格社員はまだ帰っていないようだった。
 打ち合わせは14時半から16時半の予定だから、この時間に帰っていないのは遅すぎるように思えた。
 それでも、「話が盛り上がっているのかもしれませんよ。夕食を一緒にどうですかなんて言われたりして」という男性社員の言葉に残りの社員は納得した。
 
 しかし、彼らが夕食を終えても社長とリーダー格社員は帰ってこなかった。
「いくらなんでも遅すぎます」
 一番若い女性社員が心配顔で訴えた。
 そして、スマホを取り出して社長に電話をかけた。
 それを見た男性社員がリーダー格社員に電話をかけた。
 しかしどちらも、「おかけになった電話番号は電源が入っていないか電波が届かない所にあるためかかりません」という音声アナウンスが聞こえるだけだった。
 
 何度かけてもそれは同じだった。
 社員の顔に動揺が走り、すぐさま依頼先に電話をしようとしたが、番号がわからなかった。
 みんなで離れに行って会社のパソコンを立ち上げてメールを確認すると、「どうなっているのですか?」というタイトルが目に入った。
 受信時刻は15時1分だった。
 その後に依頼先からのメールはなかった。
 不吉な何かを感じた女性社員が顧客リストのファイルから依頼者の電話番号を探して電話をかけた。


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