後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 眠れるはずがなかった。
 それは奥さんも同じようだった。
 YOUR DREAMからは、翌朝から捜索が始まるとだけ連絡があった。
 すっぽかされたと怒りを表していた奥さんは神妙な面持ちに変わっていた。
 自分たちの家に向かう途中で何かがあった可能性が高かった。
 事故か事件かわからないが、原因の一端は自分たちにあるかもしれないのだ。
 もちろん、直接の責任は無いにしろ関わりがあるのは間違いない。
 テレビも付けず会話も交わさず、ただ時間が過ぎるのを甘受するしかなかった。
 
 柱時計が零時を知らせた。
 ボーンボーンという音が12回鳴るのを頭の中で数え続けた。
 最後の音が鳴り終わった時、奥さんが立ち上がった。
 もう寝ましょう、というように女に視線を向けた。
 女も立ち上がった。
 奥さんは2階の自室に、女は1階の自室に向かった。

< 353 / 373 >

この作品をシェア

pagetop