後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 目を瞑ると何かが見えた。
 入口のようだった。
 それをぼんやりと見ていると、入口に近づく自分の姿が見えた。
 違う世界の入口からどこか知らない所へ入っていくのだろうか? 
 意識が遠のく中、他人事のようにそれを見ていた。
 
 入口が開いた。
 男は誘われるように中に入ろうとした。
 しかし、左手の小指が後ろに引っ張られて前に進めなくなった。
 入口の向こう側に入りかけた状態で男の体は止まってしまった。
 すると、耳元で囁くような声が聞こえた。
 と思ったら、目の前の靄が動いた。
 そして、周りの靄を集めて厚く膨らんでいった。
 その膨らみが男の頭を包み込むと、何かが見えてきた。
 それがスライドショーのように左から右へと流れていった。

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