後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 1945年8月9日、まだ有効だった日ソ中立条約を破棄してソ連が対日参戦し、9月初めにかけて北方四島をすべて占領してしまった。
 その時島々には1万7千人の日本人がいたが、ソ連によって強制退去させられ、今に至るまで不法占拠が続いている。
 
 歴代の総理大臣がこの問題を解決するために何度も交渉したようだが、75年近い月日が経った今も不法占拠問題は解決していない。
 それどころか、ロシアによって既成事実化され、日本に返還される目処はまったく立っていない。
 不法占拠前にゼロだったロシア人が1万8千人を超えた今では、多額の開発費が投入され、インフラと共にビジネス環境の整備が行われている。
 歴史を巻き戻さないための断固とした政治姿勢が示されているのだ。
 残念ながら、解決の道は完全に閉ざされていると言わざるを得ない。
 
 男はスマホで外務省のホームページを見ながら、この75年間の日ソ、日ロの置かれた状況に思いを馳せた。
 
 何度もチャンスがあったのに……、
 
 多くの人の無念を思うと胸が痛くなったが、ふとアラスカのことが頭に浮かんだ。

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