後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 アメリカが買い取った時のことを知りたくなってスマホで検索をすると、1867年に720万ドルで購入したとある。
 もちろんこれはロシア帝国時代の話であり、現代に当てはめることはできないが、日本にもそのチャンスがあったのではないかと思うのは自然な感情ではないだろうか。
 
 1968年に世界第2位の経済大国になった日本は、1990年代、アメリカの魂とも言われるロックフェラーセンターやエンパイア・ステート・ビルを次々に購入した。
 正に破竹の勢いで〈ジャパン・アズ・ナンバー・ワン〉を実現していったのだ。
 その時代に何故北方四島を購入しようとしなかったのか? 
 当時ゴルバチョフが大統領を務めていたソ連は〈ペレストロイカ(再建)〉という名の改革を進めていた。
 しかし、その改革は成功したとはいえず、国内は混乱し、対外的にも急速に影響力を失っていた。
 その証に、当時の西ドイツ首相、ヘルムート・コールによる巨額の対ソ連経済支援を受け入れる代わりに、ドイツ再統一に承認を与えているのだ。
 
 そのゴルバチョフが1991年4月に日本を訪れている。
 何故日本はコール首相と同じことをしなかったのだろうか? 
 巨額の対ソ連経済支援をする代わりに北方四島を返還させる交渉をしなかったのだろうか? 
 求心力が低下していた彼なら受け入れた可能性があるのではないか? 
 固有の領土という文言に拘らず、相手のメンツを立てながら臨機応変に対応していたら大きな進展があったのではないだろうか。
〈機を見るに敏〉という言葉もあるではないか。
 外交のど素人の勝手な憶測だが、それが実現していたらと思うと残念でならない。

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