後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 冷たくなった父の顔に手を伸ばした。
 生きている感触は何も感じられなかった。
 本当に死んでしまったのだ。
 現実に直面した女は絶望に襲われた。
 そして心は散り散りに乱れ、その場にいられなくなった。
 気がつくと外に飛び出していた。
 
 曇り空の中を当てもなく歩いていたが、暫くすると生暖かい風が頬を撫で始めた。
 と思ったら、急に空が暗くなり、突然バケツをひっくり返したような雨が降ってきた。
 慌てて近くのコンビニに駆け込むほどの雨だった。
 これ以上は強く降れないというほどの猛烈な雨だった。

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