後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 5分後に駅前の交差点に辿り着いた。
 信号が変わろうとしていたので急いで渡ろうとしたが、何故か足が止まった。
 「しかし」という声が内から聞こえたからだ。
 するとピアニストの後姿が浮かんできたが、その姿は哀しいものに変わっていた。
 曲を弾き終わって後ろを振り返っても拍手する人がいないからだろう。
 彼女は溜息をついているに違いない。
 そう思うと切なくなった。
 目の前の信号が緑に変わっても足は動かず、大勢の人が渡る姿をただボーっと見つめていた。
 するとどこからかメロディが流れてきたような気がした。
 物哀しい曲だった。
 『HOW CAN YOU MEND A BROKEN HEART(傷心の日々)』

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