後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 ベッドに横になったのは覚えているが、すぐに寝入ってしまったらしい。
 目が覚めた時には部屋の中は暗くなっていた。
 信じられないが、4時間も眠っていたようだ。
 それでも体は重かったし、首里城の痛ましい残像が消えたわけではなかったが、これ以上寝ることをお腹が許さなかった。
 ホテルを出て沖縄料理専門店へ向かった。
 
 食べるものは決まっていた。
 黒毛豚の中でも希少な100パーセント純血統種『金武(きん)アグー』だ。
 これだけはなんとしても食べなければならない。
 テーブルに腰を下ろすなり店の人に告げると、「ご用意できます」と笑顔が返ってきた。
 その途端、気持ちが切り替わった。
 すぐにカメラを用意して今か今かと待ちわびた。
 
 ビールに続いてしゃぶしゃぶと地野菜が運ばれてきたが、そこには通常目にするポン酢はなく、胡麻、塩、味噌の3種の薬味で食べ比べるようになっていた。
 早速食べ始めると、余りの美味しさと見た目の美しさに箸が進んで目の前の食材はあっという間に無くなってしまった。
 最後にシークヮーサーのパウダーをかけたシャーベットで口直しして大大大満足で店を出た。

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