初恋愛-ハツレンアイ-
そこには血相を変えて入ってきた那智さんが立っていた。

起き上がり自分を見つめている凛を見ると、肩を撫で下ろし、ハァ~と大きく息を吐いて

「無事なのね…」

そう言った那智さんに、凛は焦ったように視線を逸らし、俯いて

「…らしくない、そんな髪乱して…」

ボソボソ言うと、那智さんは、『え?あ、あぁ…』と、慌てて髪を弄っていた。
そんな那智さんを凛は横目でチラリと見ながら

「…色々、御免なさい…
それから…有り難う。
産んでくれて…

お母さん。」

恐らくやっちゃんから那智さんの事も聞いたのだろう…

思いがけない凛の言葉に、那智さんは、手で口元を覆い、大きな瞳に涙を一杯溜めて

「うっ…嬉し…いっ…。

凛…御免ね…
こちらこそ、生まれてきてくれて有り難う。」

声を詰まらせながら言うと、ニッコリと微笑み、
その頬に一筋の涙が零れ落ちた。

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