初恋愛-ハツレンアイ-
健は、それを素直に喜んでいた。

でもあの容姿に、擦れていない性格、男子達がほって置くわけもなく、
健の耳にも若者ならではの『落とす』だの『エロい』『ヤリて~』などの言葉が否応なしに入って来る。

いつもなら『若いな~』と笑って流せる事なのに、矢萩に関しては何故か胸に閊えてモヤモヤしてしまう。

そんなある日、いつもの様に保健室に矢萩がやってきた。

保健室のベッドは三つ並んでいる。
矢萩は、机に向かって座っている健から一番近いベッドに腰を下ろし、顔だけ向けている健に、
俯き加減でモジモジしながら

「…あっあのね、私…」

言葉に詰まる矢萩の頬は、心なしか赤らんで見え、何だかこっちもドキドキしてきたが、冷静さを装い、矢萩に背を向けていた体をクルリと回転させ、

「どうした?何かあった?」

少し微笑みを見せて聞いた。
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