初恋愛-ハツレンアイ-
寮までは直ぐだったが、ゆっくり歩いている健より更に後ろを、トボトボ下を向いて付いて来ていた。

健が足を止めると、矢萩も足を止める。

まるで心の距離を表しているようで、曾てのひまわりを感じずにはいられなかった…

神様はどういう意図で、こういう廻り合わせをしてくれるのだろうと思いながら、
後ろを向き、歩み寄り、驚いて不安そうに固まる矢萩の手をそっと取り、少し微笑んで自分の上着の裾を掴ませ歩き出した。

健は独り言のように

「矢萩、眼鏡はずせるようになるといいな…」

ボソッと言うと、

「え?」

矢萩が少し驚いたように言ったので、
今度は、

「心の楯いらなくなるといいな」

さっきより少し大きな声で言ったが、聞こえているのかいないのか、矢萩は無言のままだった。
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