転生したら恋愛小説で悲劇のヒロイン~私は死にたくありません~
アレックス様は自分の顎に手を当てて何か考えはじめた。
「これからどうしたものかな…どちらにしてもジュリア嬢が城にいるとは、ジュリアの義母も妹も思っていないだろう。少し様子を見ることにした方が良さそうだな。」
確かにジュリアはどこかの賊に連れて行かれたと思われている。
義母達が何を言ってくるのかわからない。
ここは確かに少し様子を見た方が良さそうだ。
「ジュリア嬢、少しの間は城から出ずにいてくれ。貴女がここにいることは城の中でも一部の人間にしか言っていない。不自由をかけるかも知れないが、我慢してくれるか。」
「そんな…我慢だなんて言わないでください。ご迷惑をお掛けしている私が御礼を申し上げないといけないのに…ありがとうございます。」
この状況は、私の知っている物語のストーリーとはだいぶ違ってきている。
いくつかのイベントを回避したことで内容が変わってきているのだろうか。
…死んでも良いと少し思ったが、やはり死にたくない。
*****
ジュリアの馬車襲撃事件から一週間が過ぎた。
さすがに義母達も自分の乗っている馬車が襲撃されたのでショックだったようだ。
その証拠に不気味なくらい静かなのだ。
しかし、それもわずか一週間だった。
凝りもせず義母と妹のミシェルは動き出したのだ。
なんとメイドが教えてくれたのは、本日ハーベスト家が王室を尋ねて来ると言う。
何を言いに来るかは不安だが、今となっては少し楽しみにもなって来るのだ。
恐らく白々しい事を言ってくるのだろう。