転生したら恋愛小説で悲劇のヒロイン~私は死にたくありません~

アレックス様は突然、隣の部屋にいる私に呼びかけた。
隣の部屋に隠れていたことは知られていた様だ。


「ジュリア嬢、そこに居るのだろ?…ハーベスト侯爵に元気な姿を見せてやってくれないか。」


アレックス様に呼ばれて、ジュリアは静かに隣の部屋のドアを開けた。


一番に声をあげたのはお父様だ。
義母とミシェルは驚きで言葉を失っていた。


「ジ…ジュリア!無事だったのかい。…本当に…良かった。」


お父様は瞳に溢れる涙を堪えている。
そしてジュリアに近づくと、力いっぱいハグをしたのだった。


「お父様…心配をお掛けして申し訳ございません。」


すると、アレックス様も私の肩に手を置いた。
そして、義母を厳しい目で見ながら私に話し掛けた。


「ジュリア、私は婦人とミシェルが二度と貴女に近付かないようにしたいと思う。そのために二人を遠方の島グリーンゴースト島に行かせようと思うが、それでよいか?もしそれでも足りなければ…。」


私はアレックス様の言葉を遮るように声を出した。


「アレックス様、私は義母もミシェルも島に行ってもらおうと思いません。反省しているならそれだけで良いです。…家族ですから。」


アレックス様は驚いた表情をする。


「ジュリア嬢、貴女はこれまで二人から酷い仕打ちを受けていると聞いている。それでも許すと言うのか?」


「はい、私はみなさんのお陰で幸せです。だからもう過去のことは良いのです。」


アレックス様は驚いた表情から、フッと笑うとジュリアに優しい微笑を向けた。


「貴女はとても優しい女性だな。ジュリア嬢がそれでよいと言うなら、そのようにしよう。ただし、もしジュリア嬢にまた何か手を出して来たら、その時は覚悟をしておくのだな。」

ここまでずっと声を出さなかった王様が静かに話し始めた。

「アレックス…今日は驚くような事が起こると言っておったが、このようなこととは本当に驚いたぞ。アレックスよ…我が息子ながら良くやったな。お前は自慢の息子だ。」


義母とミシェルは少しの間、ハーベスト家で謹慎となったが、グリーンゴースト島には行かずに済んだのだ。
ハーベスト侯爵は今回の件については何も知らなかったということで、お咎めなしとなったのだ。









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