転生したら恋愛小説で悲劇のヒロイン~私は死にたくありません~
「あ…あの方は、マルノフ殿下です。…私の婚約者の方です。」
その男はレノアを見つけると、ニヤニヤと悪い笑いをしながら近寄って来た。
「レノアじゃないか…久しぶりだな…もうとっくに実家に戻っていると思ったよ…」
レノアは俯いたまま小さな声で応えた。
「…申し訳ございません…」
ジュリアはその様子を黙って見ていられなかった。
「ちょっと…あなたはレノアさんの婚約者でしょ?もっと優しい言葉はかけられないの?」
するとマルノフはジュリアの目の前に立ち、ジュリアを睨みつけた。
「なんだと!俺を誰だと思っているんだ。」
ジュリアは負けずにマルノフを睨みつけた。
「あなたが誰であろうと、自分の婚約者に暴言を吐くような男を私は許せないのよ!」
「この女、痛い目にあいたいみたいだな、女でもやってしまえ!」
マルノフが自分の周りにいた男たちにジュリアを痛めつけるように命令した。
すると、ジュリアは二人の男から両手を掴まれてしまう。
「離してよ!何をするの!」
そしてマルノフはジュリアを叩こうと手を上げた。
ジュリアは殴られる痛みに備えて目を閉じて歯を喰いしばった。
しかし聞こえてきたのはマルノフの悲鳴だった。
「い…い…痛い…何をする!」
ジュリアが恐るおそる目を開ける。
そこには後ろから手を押さえられたマルノフが痛がっていた。
「マルノフ、私の大切なジュリア嬢に何をするつもりだ。」