転生したら恋愛小説で悲劇のヒロイン~私は死にたくありません~

兄と弟


アレックス様がお茶会会場のドアを開けようとした時だった、私達の後ろから一人の男性が声を掛けた。

「女性たちのお茶会にお邪魔するとは…お兄様も無粋ですね。」

「…なんだと、ブラックス。」

アレックス様が振り返るとそこにいたのは、ブラックス皇太弟だ。
彼は燃えるような赤い髪と瞳を持っており、彼もかなりの美形男子だ。


私はブラックスという名前を聞いて以前読んだ本を思い出した。
確か彼はとても優秀で養子として王家に迎えられたのだ。
もちろんアレックス様と血のつながりは無く、王太子の座を狙っているのだ。

もし物語の通りであれば、夜会の時にアレックス様はブラックス皇太弟に刺されるのだ。
命には別状なかったが、その事件が元で王太子派と皇太弟派に王族が分かれて争いが起きるのだ。

そして…私は濡れ衣を着せられてアレックス様にも裏切られて命を落とすのだ。
私が死んでからアレックス様はすべてブラックス様に仕組まれたことと気づいてくれるのだけど、それでは遅すぎる。
ただ、この前の婚約パーティーで少し物語が変わって来たので、アレックス様と話ができる状況だ。
物語ではすでに私はアレックス様との間に深い溝ができていて、話もできなくなっていたはずだ。

なんとしてもブラックス様の陰謀も阻止しなきてはならない。


「これはこれは、ジュリア嬢、私はアレックス兄様の弟でブラックスといいます。・・以後お見知りおきを。」

ブラックス様は左手を胸に当てて跪いて挨拶をした。

「は…初めまして…私はジュリア・ハーベストと申します。皇太弟様、よろしくお願い致します。」

ブラックス様は妖しい微笑を浮べてジュリアを見た。
すると、アレックス様が声を出した。

「ところでブラックス、こんなところに何の用事だ。」

アレックス様の質問にブラックス様は呆れたように両手を広げて話し始めた。

「先程、お兄様の執務室にお邪魔したら、ジュリア嬢のお茶会へ様子を見に行ったと聞いて驚いて来てみたんだ。どれだけの美女が兄様を誘っても興味を持たなかった兄様が、様子を見に行くとは信じられないな。」




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