護衛騎士は聖女の教育係(男性不信)を一途に愛する
 フィオナは戸惑いながらじっとヴィアを見つめる。ヴィアを見つめながら固まっているフィオナに、ヴィアは不思議そうな顔で尋ねた。

「どうした?」
「えっ……いや、ええと、いつも以上に素敵な姿でつい見惚れた、のかな」

 ごまかすように笑うフィオナを、ヴィアは目を大きく見開いて見つめる。そして、片手で口元を覆うと、静かに後ろを向いた。

「ヴィア?」
「っ、いや、なんでもない。フィオナこそ、綺麗に着飾っていて素敵だ」

 すぐにまたフィオナの方を向くと、いつものように真顔になってフィオナを誉めた。

「そんな、気を遣ってくれなくていいのよ。慣れない美しいドレスでなんだか恥ずかしい」
「気を遣って言ったわけじゃない。本当だ、美しいよ。俺がフィオナに嘘をついたことがあったか?」

 その眼差しに嘘は見られない。まるでヴィアに心を射抜かれたように、フィオナはまた動けなくなっていた。

(どうしよう、どうしてこんなに心臓がうるさいの?しかも顔が、熱くなっている気がする)

 顔を赤らめてじっと見つめるフィオナの頬に、そっとヴィアは手を近づける。フィオナは一瞬驚くが、嫌なそぶりも見せず黙ってヴィアを見つめたままだ。ヴィアの手はフィオナの頬に触れることはなく、すぐそばで止まる。

「ヴィア、フィオナ嬢。そろそろ時間だ」

 背後から声がして、二人はハッと我に返った。
< 12 / 30 >

この作品をシェア

pagetop