護衛騎士は聖女の教育係(男性不信)を一途に愛する
 その当時は元婚約者にひどい仕打ちを受けた可哀想な令嬢、そんな風にしか思わなかった。こんな酷いことは早く忘れて、心優しいどこかの令息にみそめられ幸せに暮らせばいい、この令嬢は幸せになるべきだ、ただそう思っていた。

 月日が流れ、聖女の護衛騎士として任命され、聖女の教育係と顔合わせをする。その時、その教育係があの時の令嬢だとヴィアはすぐに気がついた。その令嬢フィオナは、その後誰とも婚約することなく、ひたすら勉学に励み、教育係としての立場を獲得したようだった。
 フィオナはヴィアをあの時助けてくれた騎士だとわかっていない。きっと思い出したくもない過去だろうから別にわからないままで構わない、ヴィアはそう思っていた。

 フィオナの男性に対する態度がおかしいことに気づいて、ヴィアはあの時のことがフィオナをずっと苦しめているのだと知る。あの時のフィオナを思い出し、心が何かに蝕まれるような、苦しさを感じるのだ。

 次第に聖女の護衛騎士と教育係として共に過ごすうちに、ヴィアはフィオナの聡明さとひたむきさ、明るさに惹かれ始めていた。そして時折見せる苦しげな表情も、あの時のフィオナを知るヴィアにとっては苦しさとなんとかしてあげたいのにできないもどかしさで胸がいっぱいになるのだった。

(俺はフィオナの過去を知っている。だからこそ、フィオナを頼ることはできない。例えこの体が毒に侵され死ぬことになろうとも)



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