護衛騎士は聖女の教育係(男性不信)を一途に愛する
「本当に、いいのか?」

 ヴィアの問いに、フィオナは静かに微笑んで頷いた。それが合図になったかのように、ヴィアの手がゆっくりとフィオナの頬に触れる。ヴィアの手の感触がフィオナの頬に伝わってくるが、フィオナは嫌悪感もなく、吐き気もめまいも起こらなかった。ただ、心臓だけはバクバクとうるさく鳴り響き、顔に熱が集中していく。

(ヴィアの手は暖かいのね。それに私に気を遣ってくれているのがわかる。本当に優しい人)

 フィオナが苦しそうになっていないのを確認して、ヴィアは内心ホッとしていた。そして、そのことがヴィアの心を軽くしていく。もしかしたら自分は、自分だけはフィオナに受け入れられているのかもしれない。そう思うと、ヴィアの全身に血がどくどくと流れ始めていった。

 ゆっくりと静かに、ヴィアの顔がフィオナの顔に近づいていく。今にも触れてしまいそうな距離にヴィアの顔があるのに、フィオナは全く嫌な気持ちがしなかった。そっと、静かにヴィアの唇がフィオナの唇に触れる。

(柔らかくて、暖かい……)

 そっと唇が離れ、ヴィアがフィオナの顔を確認すると、ヴィアは一瞬目を見開いてからすぐにまた唇を重ねた。ゆっくりと、何度も何度も唇を重ねる。時折、小鳥が啄むように優しくフィオナの唇を食む。そうして、いつの間にかヴィアの舌がフィオナの口内に侵入していた。

 不思議な感覚がフィオナを襲う。だが、決して嫌な気持ちにはならない。やっぱり自分はヴィアのことを好きなのではないかとぼんやり思っていると、唇が離れヴィアの瞳がフィオナの瞳を覗き込んだ。ヴィアの瞳に映り込んだ自分の蕩けた顔に、フィオナはぼんやりとしながらも驚く。

 蕩けた顔で見つめてくるフィオナの体を抱き抱え、ヴィアは自分のベッドにゆっくりとフィオナを下ろした。
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