護衛騎士は聖女の教育係(男性不信)を一途に愛する
「フィオナ嬢、すまないけれどヴィアを借りるよ」
「今日は業務が終了しているので大丈夫です」
「それじゃ、また明日」

 ヴィアがフィオナにそう言ってベルゼの方に向かうと、ベルゼはフィオナの耳元に近寄る。

「フィオナ、今度二人で食事でもどうかな。ヴィアはつまらない男だろう?息抜きも必要だよ」

 見目麗しいベルゼにそう言われれば、大抵の女性は簡単に落ちるだろう。だが、フィオナは恐ろしさと嫌悪感で全身に鳥肌が立ち、呼吸が止まりそうだった。

「ベルゼ、フィオナにあまり近寄るな」

 そう言ってヴィアがベルゼをフィオナから引き離す。

(よかった、離れてくれた……)

 心臓がバクバクとなって苦しい。止まっていた呼吸を慌ててするように息を整えていると、ヴィアがフィオナにそっと手を近づける。だが、その手はフィオナに触れることなく、フィオナの背中近くで止まっていた。

「大丈夫か。すまない、こいつは距離感がおかしいんだ」
「え、ええ。大丈夫、ありがとうヴィア」

 心配させまいと笑顔を作ると、ヴィアは眉間に皺を寄せてフィオナを見つめた。

「騎士団長がお呼びなのでしょう。私は大丈夫だから、早く行ったほうがいいわ」
「……そうか」

 仕方ないという表情でヴィアはベルゼを引っ張って歩いていく。

「なんだよ、お前、フィオナ嬢を取られたくないのか?必死だな」
「そういうことじゃない、お前は手当たり次第に口説きすぎだ」
「綺麗な花があれば手に入れたいと思うのは当然だろ」
「馬鹿なのかお前は」

 歩いていく二人から会話が聞こえ、フィオナは苦笑しながらヴィアの背中を見つめていた。







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