護衛騎士は聖女の教育係(男性不信)を一途に愛する

狙われた聖女

「怪文書が届いた?」

 聖女リリアの部屋に入ったフィオナとヴィアは、部屋の中にいたリリアとこの国の第一王子デミルの不安そうな顔を見て眉を顰める。どうやら、リリア宛にデミルとの結婚を取りやめろ、さもなくば命を狙うと書かれた怪文書が届いたようなのだ。しかも、封筒の中には刃こぼれが入っており、気づかずに開けた側近が怪我をしたらしい。

「俺とリリアの結婚は国で決まっていることだ。リリアを守るために結婚をやめたくてもやめることはできない。犯人が捕まるまで、どうかリリアを守ってほしい」

 神妙な面持ちで言うデミルのそばには、不安そうな顔のリリアがいる。二人を見て、フィオナは胸が苦しくなった。犯人は一体誰なのだろう、どんな目的でこんな怪文書を送ってきたのだろうか。

「リリア様のことは全力でお守りします」
「リリア様の元に届けられたものは全て私が開封して中身を確認します」

 これ以上リリアを守る大事な側近たちから怪我人を出してはいけない。誰かが犠牲になるならまずは自分からだ。そうフィオナが思っていると、ヴィアが険しい顔で口を開く。

「それはダメだ。フィオナは教育係であって護衛でも側近でもない。そこまでする必要はない」
「どうして?リリア様の教育係だけれど、それ以前に、私はリリア様をお守りするために一番近くにいるのよ」
「危ないだろう。教育係のフィオナに何かあれば、その後誰がリリア様の教育を行うんだ」
「それは……」

 フィオナとヴィアが押し問答していると、デミルが二人の間に割って入る。

「落ち着け、二人とも。リリアのことを思ってくれるのはありがたいが、二人とも大切な護衛であり教育係だ。ここで仲違いされては困る」



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