色のない世界でただ君を見つめていたかった
全部言ってしまおうか、いや、ダメだ。さなは優しいから俺がもうすぐ死ぬことを知ったら泣いてしまう。
さなには涙を流してほしくない。笑っていてほしい
これ以上入院のことについて話したらボロがでるかも知れない
話を逸さないと、。
「さな、なんか元気ないけどなんかあった?」
「いや、なんもないよ」
さなは何かあってもなんでもないと言う癖があった
「それ、俺には通用しないっつの、話してごらん」
「本当にくだらないことだよ?」
「でもそのくだらないことでさなは困ってんだろ?」
「うん、まぁ。」
「じゃあ何があったか話してごらん」
「この前の進路希望調査票あったでしょ?」
「あったね」
「私昔から花屋になりたくて、それを書いたの…」
「けどお母さんが…だめ…て……っ」
「そんなの…なんの 役にも立たない……って」
と言い必死に涙を堪えている
さなは小さな頃から大きくなったら花屋になると言って幼稚園で花壇に生えている花に毎日水をあげたり、中学生に入ってからは色々な種類の花の栽培方法などを調べたり、、きっと俺が知らないところでもたくさんの努力をしたんだろう。
「辛かったな、さな」
「俺は小さい頃からさなの夢応援してるよ。おばちゃんがなんて言おうとさなの人生はさなのものだから好きなことしたらいいと思う、おばちゃんが納得できる理由とかさ、一緒に考えようぜ」
と言うとさなが泣き出してしまった
「お、おい大丈夫かよ」
「いおりは優しいよね、こんな…歳になっても花屋になりたいだなんておかしいでしょ…」
「おかしくなんかないよ、花屋がなかったら誰も大切な人に花を贈れなくなるだろ?」
「うん…そうだよね、、なんかいおりに話したらスッキリしたかも」
涙の跡が残ったさなの顔は、雨上がりの空のように透き通った笑顔を見せた
あぁ、やっぱり俺はさなのことが好きなんだな、、。
「いいんだよ。さなが俺に悩みを話してくれて嬉しいから」
「何言ってんのよ」
「今日放課後空いてるか?色々対策考えようぜ」
「空いてるよ、ありがとう」