色のない世界でただ君を見つめていたかった
「お母さん誕生日おめでとう!
おばちゃん誕生日おめでとうございます」






と言うと暖子さんは顔にペタリと引き攣った笑顔を貼り付けて






「さな、貴方なにをやっているの?」







そうきたか…





「なにって、今日はお母さんの誕生日でしょ?お祝いしなくっちゃ!」






「さな、今期末3週間前よね?」


暖子さんの顔から笑顔が消えた







「え、、でも、その…」






さなは動揺してしどろもどろになってきている





やっぱり俺がなんか言ったほうがいいか




「あの、」

「なに考えてんのよ!」




俺の声をかき消して暖子さんの怒鳴り声が部屋中に響いた




「誕生日を祝う?笑わせないで。そんなことのために何時間使ったの!?その間勉強は?いい加減にしなさいよそんな悪い成績でこの先どうするつもり?大学行けると思ってんの?」





暖子さんのこんな姿は今まで見たことがなかった。よほど切羽詰まっているんだろう






「…で………っなんでお母さんはそんなこと言うの!?お父さんが来てた頃は毎年みんなの誕生日祝ってたじゃない!

なんで変わっちゃったの?お父さんが死んでからお母さんは変わったよね、私ばっかり元の日々に戻ろうとしてた、

けどお母さんは違う、ずっとお父さんの死を引きずって、そんなことお父さんが望むわけないでしょ?」


「貴方になにがわかるのよ !!!!!」





「もういいよお母さん、お母さんは私の気持ちなんてわからないでしょ。」


と言いさなは家を飛び出して行った



暖子さんはため息をついて、椅子に座った。




「さな追わなくていいんすか」



「ごめんなさいね、こんなとこ見せちゃって。私が行ってもきっと余計なことを言ってしまうわ、衣織くんお願いしてもいいかしら?」





「わかりました。けど、さなを連れ戻した時、ちゃんとさなと本心で話し合いしていただけますか?

 部外者の俺が言うのもなんですけどさなは今日のために色々と準備して…さななりに頑張った結果なんです。

 それだけ、頭の片隅に置いてさなと話していただけると嬉しいです」







俺は八代家を出て花水公園(かすいこうえん)へ向かう


何かあったら花水公園に集まっていたため、さなはそこにいるだろう
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