色のない世界でただ君を見つめていたかった
ただいま
ガチャ
再び八代家に戻り、リビングに入った
暖子さんに声をかけられないでいるさなの肩に手を当てて「頑張れ」と囁いた
さなは微笑む
「お母さん、ただいま」
「さな…おかえりなさい」
「お母さんあのね、お父さんがいなくなってお母さんは花屋を辞めちゃったでしょ?
でも私はお母さんに花屋を辞めて欲しくなかった。
お母さんが花屋をしてる姿が好きだったんだ。
もちろん花屋だけじゃ生活費が足りないのもわかってる。その分私もバイトして手伝うからさ、もう1回お母さんの花屋を見たいな」
「さな、何を…」
「わかってる。
いや、わかってた。
私に勉強しなさいって言うのは、
花屋なんて何の役にも立たないって言うのは、
私にお母さんみたいな苦労をさせたくなかったからでしょう?」