悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 仕事だなんてころっと忘れ、彼との口付けに夢中になりながら自分で衣服のボタンを外すと、開かれた合わせの部分からすかさずルミール様が手を差し込んだ。

「あ、んっ」

 肌を滑る彼の手のひらに小さな嬌声を溢れさせると、くすりと彼から笑みが零れる。

「自分で脱ぐなんてサシャはいやらしいんだな」
「や、そんなこと」
「ほら、舌を出して? もっと口付けたい」
「んぁ、っ」

 言われるがまま舌を出すと、彼の舌の先端がくちゅりと触れる。
 そのまま舌先が扱くように動かされたと思ったら唇も重なり、そして体重をかけられるままぐらりと体勢が崩れたと思ったらベッドへと組み敷かれていた。

 はぁはぁと荒い呼吸をしながら見上げると、逆光になったルミール様と目が合う。
 薄暗くて彼の表情があまりわからないはずなのに、彼の瞳に確かな劣情が揺れていることに気付いた私の下腹部がズクンと熱を孕んだ。

“この表情も、この時間も。今だけは私のものなんだ”

 彼の閨係として買われただけだとわかっているけれど、それでもこの瞬間は彼を独り占め出来るということが嬉しくて堪らない。

「ルミール、様」
「サシャ」
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