悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 彼の気遣いが嬉しい。大事にしたいと思ってくれるその心が嬉しい。
 勘違いなんてしたくないのに、優しく口付ける彼が温かくて何故か泣きそうになる。

 ――彼とシたい。最後までシたい。
 それが、私と彼の最初で最後の行為になるのだとわかっているけれど。
 
「じゃあ、帰りましょうか?」
「あぁ」

 滲んだ目元に気付かれないように、脱いだ服を再び着るフリをして下を向く。
 短く返事をしたルミール様が乱れた衣服を直しているのをこっそり盗み見ながら、私はそっと涙を拭ったのだった。
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