悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
「サシャとお呼びください、公爵様」
「あぁ、サシャ」

 名前を呼び捨てられてドキリとする。
 相手はあの悪徳公爵なのに、その声色がとても柔らかく穏やかだったからだ。

 きっと彼はこの後の行為も優しいのだろう、そう不思議と感じた。

“そして翌朝には捨てられるのね”

 泣いて何も話さないという令嬢たちは、夢を見てしまったのかもしれない。
 この彼に愛される未来を、そして処女でなくなった瞬間に捨てられたという事実が彼女たちの口を閉ざしてしまった。
 そう考えれば辻褄が合う。

“でもそれは彼女たちが『妻』だったからだわ”

 私は娼婦。買われた翌日、また別の人に買われ体と夢を売るのが仕事なのだ。
 まだ売ったことはないけれど。

「貴女に頼みたい仕事なのだが」
「はい、なんなりと」
“どんなプレイでも!”そう心の中でだけ付け足し彼からの言葉を待つ。
 処女狂いならば、初々しく相手に合わせるべきなのだろうか?
 それともお姉様たちから学んだことを実践するべきなのか。

 早鐘を打つ心臓を押さえながら静かに彼からの言葉を待っていた私へ告げられたのは。
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