悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
その時だった。
「そうそう、あんたの最初のお客様、早速お見合いをしたらしいよ」
今思い出したとばかりに告げられた言葉にドクンと心臓が跳ねる。
“ルミール様が……”
お貴族様のお見合いなんてほぼ本決まりの顔合わせのようなものだと聞いた。
ならば彼の六度目の結婚ももうすぐなのかもしれない。
“動揺するな、私!”
彼はあくまでもただの『客』だ。
私がショックを受けるなんておかしい話だから。
「……そうですか。私との練習が早速役に立ちそうで良かったです!」
「本当に客は取るかい?」
「はい!」
ニコッと笑顔を作り女将の方へ振り返りそう答える。
そんな私を暫くジッと見つめた女将が、今度は私へと背を向けた。
「わかった。何度も言うが、客が部屋に足を踏み入れた時点で契約成立だ。拒否も交代もできないからね」
「はい」
私はそんな女将に、もう一度そう短く返事をしたのだった。
――まさかその言葉を、早速後悔することになるとは知らずに。
◇◇◇
「いよいよね……!」
そろそろノースィルの開店の時間だ。
「そうそう、あんたの最初のお客様、早速お見合いをしたらしいよ」
今思い出したとばかりに告げられた言葉にドクンと心臓が跳ねる。
“ルミール様が……”
お貴族様のお見合いなんてほぼ本決まりの顔合わせのようなものだと聞いた。
ならば彼の六度目の結婚ももうすぐなのかもしれない。
“動揺するな、私!”
彼はあくまでもただの『客』だ。
私がショックを受けるなんておかしい話だから。
「……そうですか。私との練習が早速役に立ちそうで良かったです!」
「本当に客は取るかい?」
「はい!」
ニコッと笑顔を作り女将の方へ振り返りそう答える。
そんな私を暫くジッと見つめた女将が、今度は私へと背を向けた。
「わかった。何度も言うが、客が部屋に足を踏み入れた時点で契約成立だ。拒否も交代もできないからね」
「はい」
私はそんな女将に、もう一度そう短く返事をしたのだった。
――まさかその言葉を、早速後悔することになるとは知らずに。
◇◇◇
「いよいよね……!」
そろそろノースィルの開店の時間だ。